非営利活動の経営

企業経営から学ぶ非営利活動の経営
ナレッジ・マネージメントの視点から考える

「はじめに」

筆者は、小さな建築工務店の経営にたずさわっている。また、NPO法人として、商店街の活性化事業にもかかわり、『経営』ということを常に考えながら日々暮らしている。
非営利活動(団体)である、社会福祉協議会(以下社協)や福祉施設、ボランティア活動は、この経営ということについて、すこし馴染めないのかも知れない。しかし、社会福祉基礎構造改革、そして、今後予想される社会保障、社会福祉改革にあって、ますます経営について考えなければならない時代が確実にくると予想される。
本紀要のコミュニティワークの視点からは外れるとは思うが、経営について論じてみたい。

1.知(知識-ナレッジ・マネジメント)とは何か?

マイナス成長・世界同時株安・原油高騰・国際化・自由化の波…日本経済は、かなり厳しい状況にある。
こんな時代にあって、従来の経営手法や経営戦略の抜本的な見直しが必要とされている。そこで、注目されているのが、経営資源として、「知(知識-ナレッジ)」が必要とされている。この「知」とは、大ざっぱに言えば、社員一人ひとりがビジネスを通して得た情報・経験・ノウハウなどの「個人知」のことである。
ナレッジ・マネジメント(Knowledge Management:KM)とは、この「個人知」を組織全体の財産として共有していこうということであり、すなわち「組織知」として社員全員が活用できるようするという考え方である。

(1) ナレッジ(知)とは?

知とは何かと考えると極めて哲学的になってしまう。ここでは、ナレッジ・マネジメントなかで考えられる知について4つあげてみたい。それは、データ・情報・知識・知恵の4つである。この4つは厳密には区別できず、入り交じっていることもある。

(ⅰ)データ
「今日はおにぎりが100個売れた」「今月の売上は1千万円」などのように事実を示したものがデータである。あるいは、「来月の売上予測は1千2百万」などのように確定していないデータもある。

(ⅱ)情報
データを元に意図的に加工し構造化したのが情報で、例えば、おにぎりの曜日別の販売個数を集計したり、季節事の売上を分析したりすることである。

(ⅲ)知識
知識とは,情報を分析してうえで、次へのステップを踏み出すことである。この踏み出すということは、実際に行動するということだけではなく、頭の中で記憶することも含まれる。つまり、おにぎりの売上げデータの分析を行った結果、仕入を2倍にするなどが知識である。ただ、この知識は、情報→データという一連的な流れだけではなく、経験や人から聞いた話、更には書物などからも得ることが出来る。

(Ⅳ)知恵
知恵と知識との関係には様々な考え方がある。知識を応用するのが知恵という考え方もある一方で、知識がなくとも知恵があるという考え方もある。俗にいう「ひらめき」もまた知恵だと考えられる。ナレッジ・マネージメント知恵とはかなりあいまいで、数値や言葉として明示するのが難しく、個人が潜在的に抱えているものだといえる。
企業に求められている「知」とは、知恵に近いものだと考えられ、ナレッジマ・ネジメントにおいては、この潜在化した知恵を表出化することが重要になる。
ナレッジマ・ネジメントは、この情報・データ・知識・知恵を共有することで、企業価値をあげていこうということである。

(2)マニュアルワーカーからナレッジワーカー

今までの日本企業は、マニュアル・ワーカーと呼ばれるものが中心であった。つまりピラミッド型組織にあって、上下関係、終身雇用制がひとつのかたちとなっていた。今、求められているのは、知の活用者としてのナレッジ・ワーカーなのである。
企業に依存していたワーカー(社員)は、潜在していた知識を全面的に表出化していき、組織から離れても自立できる能力が必要とされる。それは、企業の成長にもなり、個人の成長ともつながる。
人材育成の場面でも、ひとつの答えを導かせるクイズ思考(マニュアル・ワーカー)ではなく,種々の選択肢から最適解を導びかせるパズル思考(ナレッジ・ワーカー)へと変えていくことが大切である。
ナレッジ・マネジメントを展開するにあたって、ナレッジ・ワーカーが必要なってくるのである。

(3)ナレッジ・マネジャー

ナレッジ・マネジメントを効率的に行うためには、「現場責任者」であるナレッジ・マネジャーの存在が必要になってくる。この役割としては、個人が持っている暗黙知を表出化し、情報価値を選別化し、誰もが利用しやすいようにデータ化・文章化していく立場の人間で、能力的ですぐれた人材が求められ、権限や身分が保証されることが必要になる。

(4)ナレッジ・マネジメントに必要な道具

ナレッジを組織で共有化するためには、グループウェアと呼ばれるものがある。ナレッジ・マネジメントが注目され、多くの企業で構築される要因にもなっている。このグループウェアの主な機能は、電子メール、ファイルの共有、掲示板、スケジューラー、ワークフローシステム(起案-決裁)などで、ひとつの画面で何人もが情報交換・意見交換を行うなど可能である。

2.非営利活動のナレッジ・マネジメントまとめにかえて・・・

ナレッジ・マネジメントについて論じてきたが、非営利活動だからと企業と区別がある訳ではないと筆者は考える。社協という一企業を考えた場合も同じことがいえるのではないだろうか?
「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」は、あまりにも当たり前のことではあるが、ひと味足りないように感じる。それは、「知」なのではないだろうか?
マニュアル化したコミュニティワーカーが存在する社協の発展はないと感じる。また、「知=ナレッジ」を全面的に表出化したコミュニティワーカーが存在し、ナレッジ・マネジメントの構築が成功した社協は発展し、同時に地域社会の発展にもつながると確信する。
もっとドラマチックな社協改革が今求められているのではないだろうか?
本寄稿では、ナレッジ・マネジメントの入口にとどまったが、経営について、更に探求していきたいと思う。

 

参考文献
1.高梨智弘『わかるナレッジマネジメント』(2000)ダイヤモンド社
2.富士通ナレッジ・マネジメント http://segroup.fujitsu.com/km/

2008.3

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